「なぜ」を語れる経営者は、信頼される。

ゴールデンサークル理論から学ぶ、共感と納得の伝え方

■ こんな経験、ありませんか?

「うちの強みは、品質の高さとスピード対応です」
「他社より安く、丁寧な仕事をします」
そんなふうに、自社の良さを一生懸命伝えても、お客様の反応がいまいち薄い…。
経営者であれば、一度は経験があるのではないでしょうか。

実はそれ、「What(何をしているか)」ばかり話しているから、かもしれません。

これは、商品やサービスの“スペック”ばかりを語ってしまう伝え方の落とし穴です。
なぜそれをやっているのか? どんな想いがあるのか?
そこが伝わることで、初めてお客様は「あなたから買いたい」と感じてくれるのです。

今回は、アップル社のスティーブ・ジョブズも実践していた「ゴールデンサークル理論」をヒントに、経営者の伝え方を見直してみませんか?


■ ゴールデンサークル理論とは?

マーケティングやリーダーシップ論で有名なサイモン・シネックが提唱した理論で、人の心を動かす順番を「Why→How→What」の順で説明しています。

  • Why(なぜ):あなたがその事業をしている理由や信念
  • How(どうやって):その信念をどう実現するのかという方法
  • What(何を):提供している商品やサービス

多くの企業は「What(何を)」から話しがちですが、顧客の心を動かすのは「Why(なぜ)」からスタートするコミュニケーションなのです。


■ Why(なぜ)── 経営の“想い”を言葉にできていますか?

私のクライアントである、ある飲食店の経営者さんは、ずっと「もっとお客様を増やしたい」と言っていました。でも、本音は違ったのです。

じっくり対話を重ねていくと、こう語ってくれました。

「子どもと一緒に過ごす時間を増やしたいんです。そのために、回転数で勝負する働き方から脱却したい」

これこそが、その方の「Why」でした。

この「Why」が言葉になったことで、メニューや営業時間、スタッフの働き方、お客様へのメッセージまで、すべての方針が一貫し始めたのです。
結果、売上も利益も上がり、何より本人の表情が柔らかくなりました。


■ How(どうやって)── 想いを実現する手段が、“戦略”になる

次に考えるのが「How(どうやって)」です。

前述の飲食店では、高回転で稼ぐビジネスから脱却するために、

  • 高単価のコース料理を育てる
  • 来店頻度は減ってもファンになってもらえる接客を強化する
  • 営業日を減らす代わりに仕込みの質を上げる

という「How」を選びました。

「もっと儲けたいから値上げする」のではなく、
「家族との時間を大切にしたいから、この価格設定にする」——。

お客様にとっても納得のいくストーリーになります。


■ What(何を)── 何を提供しているかは、最後に語る

このようにWhy→Howがあって初めて、「だからこの商品なんです」と伝える「What(何を)」が生きてきます。

商品やサービスそのものの説明は、実は最後でいい。
お客様は、スペックではなく、「共感できるストーリー」に反応するからです。

たとえば…

「この事業計画づくりの支援は、社長が“もう一度経営にワクワクする時間”を取り戻すためのサポートです」

単なる“事業計画”ではなく、こう語ることで、「ああ、この人は自分の未来に本気で伴走してくれる」と伝わります。


■ あなたの「Why」は何ですか?

私は中小企業の経営者に、数字を扱うコンサルティングを提供しています。
でも、それは単に利益を出すための“方法論”ではありません。

「やりたいことを、やりたい形で実現する」
そんなビジョンを一緒に描き、その実現に必要な“数字”を味方にしてほしい。

それが、私の「Why」です。


■ 最後に:伝わる順番を変えると、未来が変わる

あなたが日々考えていること、社員に伝えていること、そしてお客様への言葉。
それらを「What(何)」からではなく、「Why(なぜ)」から始めてみませんか?

伝え方の順番を変えるだけで、思っている以上に世界は動きます。
それは、私が日々現場で見ている“経営の真実”です。

ぜひ、あなた自身の「Why」を言葉にしてみてください。
そこから、未来の経営が始まります。