牛丼1杯9円の利益!? なぜ吉野家は儲かる?
「吉野家の牛丼1杯の利益は9円しかない」という事実をご存じでしょうか。
9円という数字を聞くと、「そんなに薄利でどうやって商売が成り立つのか?」と疑問に思う方も多いかもしれません。
確かに、1杯あたり9円の利益では、人件費や家賃、光熱費を賄うことは難しく、単純に考えれば事業として成立しないように見えます。
しかし、吉野家はこの低価格戦略を前提に、しっかりと利益を確保するビジネスモデルを築いています。
そのカギとなるのが、サイドメニューの販売です。
牛丼はあくまで「集客のための商品」であり、本当の利益はサイドメニューで生み出しているのです。
今回は、吉野家がどのようにサイドメニューを活用して利益を出しているのかについて解説します。
1. 牛丼は「おとり商品」、本当の利益はサイドメニューで確保
吉野家の牛丼は、「安くて早くて美味しい」という理由で、多くの人に選ばれています。
しかし、価格を抑えることで顧客の来店を促しているため、利益率は非常に低くなっています。
一方で、サイドメニューは牛丼と比べて原価率が低く、利益率が高いため、
牛丼とセットで注文してもらうことで、店舗全体の利益率を向上させる仕組みになっています。
*下記価格は現在のものと異なっている場合があります。
商品 | 価格 | 原価率 | 1品あたりの利益 |
---|---|---|---|
牛丼(並) | 448円 | 50% | 9円 |
みそ汁 | 77円 | 20% | 約60円 |
卵 | 77円 | 25% | 約57円 |
サラダ | 121円 | 30% | 約85円 |
豚汁 | 230円 | 40% | 約138円 |
このように、みそ汁や卵といったシンプルなサイドメニューでも、牛丼の数倍の利益を生み出します。
豚汁に至っては、牛丼1杯の利益(9円)の15倍以上の利益が出る計算になります。
つまり、吉野家は牛丼単品での利益には頼らず、いかにサイドメニューを追加注文してもらうかが重要なポイントとなっています。
2. つい頼んでしまう「サイドメニュー販売の仕組み」
では、なぜ多くの顧客がサイドメニューを注文するのでしょうか。
その理由は、吉野家が巧みに設計した「注文させる仕掛け」にあります。
1. セットメニューによる価格戦略
「牛丼(並)+みそ汁+卵」のようにセットメニューを用意し、単品で注文するよりも少し安く見える価格設定にしています。
この手法により、「セットの方がお得」と思わせ、自然にサイドメニューの注文を促します。
2. メニューの配置戦略
券売機やメニュー表をよく見ると、セットメニューが目立つ位置に配置されています。
また、「おすすめ」や「人気No.1」といった表示を使い、セットを選びやすくする工夫もされています。
3. 「+〇〇円で追加」の心理
「+77円でみそ汁を追加」「+121円でサラダ付き」など、小額の追加で注文できるオプションを提示することで、
「それくらいなら頼んでもいいか」と思わせる効果があります。
こうした仕掛けにより、単品で済ませるつもりだった顧客も、自然とセットメニューを選ぶ流れが作られています。
3. 牛丼単品9円 vs. セット注文200円—利益の違いは20倍以上
サイドメニューを活用した場合と、牛丼単品だけを注文した場合では、店舗の利益構造が大きく変わります。
注文 | 利益 |
---|---|
牛丼単品(9円) | 9円 |
牛丼+みそ汁+卵(セット) | 約200円 |
牛丼+豚汁+サラダ | 約250円 |
セットメニューを注文してもらうだけで、単品注文の20~30倍の利益を生み出すことができます。
つまり、牛丼単品だけではほとんど利益が出ませんが、サイドメニューをうまく組み合わせることで、大幅に利益を増やすことが可能になるのです。
このように、吉野家は「いかにセットを注文させるか」に重点を置いた販売戦略を展開しています。
4. 「サイドメニュー戦略」は飲食業以外にも応用可能
吉野家のサイドメニュー戦略は、飲食業界に限らず、他のビジネスにも応用できる考え方です。
例えば、
- ECサイト:本体の商品は安く提供し、アクセサリーやオプションで利益を確保する(スマホ本体+ケース+保護フィルム)
- ホテル業界:基本宿泊料金は安めに設定し、食事やアクティビティで収益を上げる
- フィットネスジム:月会費を抑え、パーソナルトレーニングやサプリメント販売で利益を確保する
このように、「集客商品」と「利益商品」を分けて考える戦略は、多くの業種にとって有効です。
5. まとめ:牛丼ではなく、サイドメニューで利益を確保する吉野家の戦略
吉野家の牛丼1杯の利益が9円しかないのに、ビジネスが成立する理由は以下の3点にあります。
- 牛丼は集客用の商品であり、サイドメニューで利益を確保している
- セットメニューの価格設定やメニュー配置など、注文を促す仕掛けがある
- サイドメニューを組み合わせることで、単品注文の20倍以上の利益を生み出している
吉野家のビジネスモデルを知ることで、
「売上を伸ばすためにどのような商品設計をすべきか?」
「利益を確保するための販売戦略はどうあるべきか?」
といった視点を学ぶことができます。
次に吉野家に行った際は、ぜひサイドメニューの配置やセットメニューの価格設定を意識してみてください。
そこには、利益を最大化するための工夫が詰まっています。