ビジネスの本質は“お困りごとを解決すること”
「ビジネスとは、結局のところ何をしているのか?」——そう問われたとき、あなたはどう答えるでしょうか。
売上をつくること。利益を残すこと。雇用を守ること。社会に貢献すること。
どれも正解ですが、それらはすべて「結果」であり、「本質」ではありません。
ビジネスの本質とは、「人の困りごとを解決すること」。
これがブレると、どんなに立派な理念を掲げていても、現場での判断や商品開発、サービス提供の軸が曖昧になります。そして結果として、「なんとなく売れない」「価格競争に巻き込まれる」「お客様の反応が薄い」という悩みを生み出すのです。
「困っている人」がいるから、ビジネスは存在する
たとえば、八百屋さんがいるのは、今日の献立に迷う主婦がいるからです。
整体院があるのは、肩こりや腰痛に悩む人がいるから。
ITシステムの会社があるのは、手作業でのミスや手間に困っている企業があるから。
つまり、すべてのビジネスの出発点は、「誰かの困りごと」。
これを解決できるから、お金が動き、感謝され、信頼が積み上がるのです。
成功している会社は、問いの立て方が違う
私のクライアントである製造業の社長は、ある日こう話しました。
「売上を上げたいと思っていたけど、それって“自分ごと”なんだよね。
でも、お客さんが“なぜ困っているのか”に焦点を当てたら、売上はあとからついてきたよ」
この会社ではそれまで、「うちの技術は高精度です」とPRしていたのですが、それがお客様には「伝わっていなかった」。
そこで営業の切り口を、「御社の納期遅れ、現場で困っていませんか?」という問いに変えました。
結果、「実はうち、前の仕入先のトラブルで大変だったんだよ」という共感を得て、新規契約に繋がったのです。
商品を売るのではなく、解決策を届ける
もう一つの事例を紹介します。
ある学習塾では、近隣に大手塾が進出し、価格競争に巻き込まれて苦しんでいました。
そこで発想を変え、「成績が伸び悩む子の“家での勉強習慣”を整える」サポートに特化。
親御さんに向けて、「家で30分、机に向かえないことで悩んでいませんか?」と訴求したところ、「それ、うちの子です!」と共感の声が多数集まり、入塾率が倍増しました。
価格を下げる必要も、カリキュラムを変える必要もなかったのです。
「お困りごと」を見つける4つの視点
では、どうやって「困りごと」を見つけたらいいのでしょうか。
以下の3つの視点をおすすめします。
- クレームやキャンセルの理由に耳を傾ける
「なぜこの商品は選ばれなかったのか」「なぜ途中でやめたのか」。そこには、お客様の“言えなかった不満”が隠れています。 - 一番売れている商品の背景を掘る
「なぜこれだけは選ばれるのか?」を分解していくと、顧客の“困りごとにぴったり合っていた”ことが見えてきます。 - 自分自身の生活での“ちょっとした不便”に気づく
経営者自身が感じるストレスや不便も、同じ悩みを抱える人への価値提供のヒントになります。 - メインターゲットの話を深掘りして聞く
商品やサービスのメインのターゲットとなるお客さんに、直接インタビューしてみると、意外なお困りごとを見つけられることがあります。
まとめ:売上は「ありがとう」の数の総和
経営が厳しくなってきたとき、視点が「売る側」中心になっていないか、一度立ち止まってみてください。
「お客様は、どんなことで困っているのか?」
「その困りごとに対して、自分たちは何を提供できるのか?」
この問いに向き合うことが、ビジネスの軸を太くし、選ばれ続ける理由になります。
そして気づけば、売上は「ありがとう」の数の総和になっているはずです